男性不妊

妊活で男性ができること。失敗しないための基本11選。

「妊活は女性がするもの」というイメージがあると思います。
しかし、妊娠には精子と卵子両方が必要。不妊の原因も男女半々。
男性も妊活をする必要があるのです。

しかし、産婦人科に行っても産婦人科医は女性の専門家なので男性へのアドバイスはあまり得意ではありません。男性の専門家として、私ドクターぬんが「妊活で男性ができること」を紹介いたします。

本気で妊活する意志があることをパートナーに伝える

この記事を読まれている男性は「本気でやるに決まってるだと」と思われるかも知れません。最近は積極的に妊活に関わろうとする素敵な男性が増えてきていますが、まだまだ大半のカップルは女性任せにしている現状があります。そのため、あなたのパートナーの頭の中には「女性の私が自分がしっかりしなきゃ」と気負ってしまっている可能性が高いです。ストレスはホルモンバランスの乱れの原因になり妊活に悪影響がありますし、妊活をきっかけに二人の関係が悪化してしまう危険もあります。せっかくですから、「本気で妊活をやることにした。二人でちゃんと勉強して頑張ろう」などと声にだして言っておきましょう。女性側の安心感が全く違います。

妊娠の基本知識を知る

簡単には妊娠しない

過去の私もそうでしたが、「避妊しなければ妊娠する」と思っている人が多いのではないでしょうか?それは大きな間違いです。現代日本では、6組に1組が不妊症(妊活開始から1年間妊娠しないこと、女性が35歳以上なら半年)です。加えて、健康なカップルが正しい妊活を行ったとしても、一回の排卵周期で妊娠する確率は15%だけで、妊娠しても15%が流産してしまいます。

妊娠では女性がリスクもある

妊娠できても、生れるまでの間には約10か月かかります。その過程で大きな精神的、肉体的負荷が女性にはかかり、亡くなってしまうかも知れません。それだけの一大イベントに男性が全く勉強せずに、ぼんやりしている訳にはいきません。また、出産は「鼻からスイカを出す」と表現されるほど大きな痛みが伴います。男性が出産の痛みを味わうと「ショック死」するという話もあります。ちなみに、出産に立ち会わなかった恨みはどの女性も心の中に秘めていて、一生夫を恨み続けるという都市伝説もあります。男性は全力でパートナーをサポートする使命があるのです。

適切な性交を行う

適切なタイミングでの性交が必須

妊娠するためには、精子と卵子が出会う必要があります。卵子は月に1回排卵日だけに卵巣から出てきます。そのため、卵子が卵巣から出てきていないときにばかり性交しても妊娠できません。排卵日の目安は月経初日から14日目です。これを理解した上での性交が必要です。

十分な回数、性交する必要がある

それでは、「排卵日だけに1回性交すればいいんですよね?」これも大きな間違いです。排卵日を予測するには、基礎体温を測定や市販の検査キットがありますが、どれも精度はそれほど高くありません。排卵日は家庭では正確に予測することができません。加えて、妊娠率が最も高いのは排卵日の2日前の性交だという報告もあります。精子の寿命が約3日であり毎回卵子のいるところまで到達できるわけでないことも考慮すると、排卵すると予測される日の1週間まえから2日に1回以上の頻度で性交する必要があります。

排卵日に関わらず2日に1回以上の定期的な性交を

妊活を始めた途端、性交=妊活のための神聖な儀式となってしまうカップルが多いです。子供を作ることだけが目的となると多くの男性は冷めてしまいます。また、男性はプレッシャーに非常に弱く、「妊娠させなければ!」と使命感に燃えるほど上手くいかなくなります。産婦人科でよく行われるタイミング法(最も妊娠しやすい日を予測してピンポイントで性交する)を開始すると約30%の男性にEDが発症します。バイアグラなど勃起補助薬で改善すればいいのですが、心因性のEDは改善が難しく人工授精が必要になってしまうことがあります。これは泌尿器科サイドでは近年大きな問題になっています。タイミング法は性交回数が病的に少ない日本独特の治療です。欧米では排卵日に関わらず2日に1回以上の定期的な性交が推奨されています。性交は単なる妊活の手段だけでなくカップル間の大切なコミュニケーション手段の一つでもあり、妊活を機に頻度が減ってしまっては、その後の人生を冷めきった関係で過ごさなければならないかも知れません。タイミング法は、仕事など社会的事情があり定期的な性交が困難な場合のみの、あくまで苦渋の策とお考え下さい。

女性ばかりが誘う状況を作らない

妊活のために自分から誘うことに多くの女性は非常に大きな精神的な負担を感じています。そのため、男性側から積極的に誘うよう心がけましょう。

3日以上禁欲しない

単身赴任の男性で多いのですが貯めに貯めて渾身の一発を絞りだす。これも大間違いです。性欲は高まるかも知れませんが、精子の寿命は3日なので、それ以上貯めても死んだ精子が貯まっているだけです。また精子は時間がたつほどDNA損傷率が蓄積するため妊娠率が低下してしまいます。

精巣のセルフチェック

治療可能な男性不妊の原因に精索静脈瘤という病気があります。日本人の6人に1人にあり、精索静脈瘤があれば100%不妊になるわけではないですが、男性不妊の原因の30%をしめます。暖かい部屋で5分ほど起立した状態で陰嚢をチェックしましょう。精巣の上にコリっとしたシコリが触れたら、疑わしいです。その場合は、男性不妊外来で精液検査と超音波検査を受けるといいです。精液検査の結果が悪い場合、妊娠率が下がってしまいますが、治療を行うことで70%ぐらいの方が改善します。

また精巣が極端に小さい場合は男性ホルモンの分泌が不十分な可能性もあります。精巣の大きさは約4cmあれば問題ありません。もし小さければ、男性不妊外来で検査を受けましょう。

陰茎の大きさと生殖機能に相関はありません。

精巣の温度を上げない

女性は「温める妊活」がよしとされていますが、男性では禁忌です。精巣にとっての最適温度は35度で、体温の37度よりも少し低いです。そのため、陰嚢は体からぶらぶら釣り下がっていて、熱を逃がしやすい構造になっています。精巣の温度が上昇してしまうと、精子の質が低下し妊娠しにくくなります

具体的には、長時間のサウナ・長風呂・こたつ・膝の上でのパソコン作業・ボクサーパンツ・スキニーパンツ(精巣を体に押し付けて温度上昇)は避けましょう。

自転車にのりすぎない

特にスポーツタイプの自転車は会陰を強く圧迫してしまい血流が低下します。EDや男性不妊の原因となることが知られています。会陰の圧迫を緩和するタイプのサドルも市販されているので買い替えるのは必須です。可能な限り自転車を乗る時間は減らしましょう。

AGA(脱毛)の薬は男性不妊の原因

AGAの薬に含まれるフィナステリドは男性ホルモンの働きを抑制することで脱毛を防ぎます。男性ホルモンは精子を作るために重要な役割を果たしているので、AGAの薬を飲んでいると妊娠しにくい体になってしまいます。男性不妊の治療ではまず内服を中止する薬の一つです。髪は大切ですが、妊活と子育てを通して身に着けた大人の魅力は、髪を補って余りあるものです。

生活習慣を変える

タバコ・過度の飲酒を避ける

精子に毒を振りかけているようなものです。

定期的な運動、食生活改善で適正体重に

肥満は精子の質の低下につながります。BMI 22を目標に定期的な運動とバランスのいい食生活を心がけましょう。一方、オリンピック選手のような超ハードな運動や、糖質や脂質を完全にカットするような極端なダイエットは逆効果です。

妊活にいい食品などと、しばしば取り上げられますが劇的な効果はありません。強いて言えば、地中海食、野菜、果物、魚、ナッツなどがよいとされています。現代の日本人は栄養状態がいいので、ジャンクフードをさけ3食ちゃんとした食事をしていれば問題ありません。

十分な睡眠をとる、ストレスをためない

睡眠不足が数日続いたり、ストレスが強いと同じ人でも別人のように精液検査の結果が異なることがあります。妊娠率にも影響を及ぼします。

変なサプリに手をださない

ネットでは沢山の妊活ゼリーや健康食品が販売されていますが、ほとんど効果のない過剰宣伝のものばかりです効果がないだけならいいですが、健康被害がでることも多いです。サプリ、健康食品は薬みたいなパッケージであっても、法律上は薬でなくただの食品です。そのため、規制が緩く半分詐欺みたいなビジネスが横行しています。

葉酸や亜鉛は男性の生殖機能を高めるよく言われていますが、近年権威ある医学雑誌で効果がないどころか、DNA断片化率を上昇させ逆効果という論文が挙がりました。https://jamanetwork.com/journals/jama/article-abstract/2758450

経済的余裕があるのであれば、信頼できる大手の会社のサプリを買う分にはあまり問題ないとは思いますが、くれぐれも詐欺まがいの手口には気を付けてください。ネットで販売されいてるバイアグラなどは半分が偽物で、死亡例も報告されています。

疑問があったら気軽に病院で相談する

不妊治療外来に来る人で意外に多いのが、結婚三年目にしてもお互いに一度も性交をしたことのないカップル。清純派で一見素敵ですが、妊活の仕方が分からりません。そのような場合、クリニックで正しい妊活の指導を受けられます。もっと小さな悩みであっても相談して嫌な顔をされることはありません。男性が相談に行く場合は不妊治療を専門にする泌尿器科医がいる男性不妊外来に行くといいです。産婦人科医は女性の専門家なので、男性の体については専門的なアドバイスが難しいです。

ネットは間違った情報があふれているので、そのまま信じてしまうのは危険です。

病院に行った方がいい人

・子供のころ停留精巣・鼠経ヘルニア・精巣周囲の手術を受けた
・性病に感染したことのある
・上で説明した精索静脈瘤の疑いがある
・精巣の大きさが4cm以下
・ED・膣内射精障害がある
・性交の仕方が分からない
・何となく不安

こんな人は気軽に男性不妊外来を受診してください。泌尿器科医は毎日何十人もの陰部を観察して、デリケートな悩みに対応しています。恥ずかしがらなくて大丈夫です。

まとめ

・本気で妊活することを伝える
・妊娠の基礎を知る
・適切な性交を行う
・3日以上禁欲しない
・精巣のセルフチェック
・精巣の温度を上げない
・自転車にのりすぎない
・AGAの薬をやめる
・生活習慣を変える
・変なサプリに手を出さない
・気軽に病院に行く