男性不妊

手術の執刀医を選ぶ失敗しない方法6選。人生を託せますか?

結論から言いますと、
・十分な症例数を経験している
・まともな経歴
・病院のブランド名でなく、執刀医で選ぶ
・大学などで研究をしたことがある
・質問に対して科学的な根拠をもって答えられる
人間として信頼できる

普段は男性不妊や泌尿器科を中心に執筆していますが。
今回の記事は手術全般にあてはまることです。
執刀医の選び方「あなたの人生その人に託せますか?」
現役大学病院医師のドクターぬんが紹介致します。

*今回の内容は救急など緊急性の高い疾患は対象外です。
ある程度、執刀医を選ぶ時間がある疾患に限った話です。
私の個人的意見で例外はあると思います。

執刀医選びが大切な理由

手術は執刀医の技量によって、治療効果・合併症・再発率が大きく異なります。同じ専門医であっても、草野球とメジャーリーグぐらい差があります。ネットなどで検索すると一般的な手術の治療効果・合併症・再発率に関する数字が出てきますが、これは世の中の平均値です。失敗ばかりしている外科医もいれば、神のようにうまい外科医もいます。執刀医を選ぶ段階であなたの人生は変化し始めているのです

・十分な症例数を経験している

メディアなどでもよく取り上げられますが、手術の経験数はとても大切です。手術を一通り身に着けるには、専門にもよりますが、年間最低100件以上の手術を10年ぐらいは経験する必要があります。

 車の教習所に通ったときのことを思い出してください。はじめての運転のときは30km/hですらとれも速く感じられ、教官の指導なくしては教習所を一周することすら、ままならなかったと思います。でも、教習所を卒業して1年ぐらい毎日運転していたら、誰でもある程度うまくなると思います。

年をとっていても、継続的に手術を行っていない医師には注意が必要です。ペーパードライバーと同じで手術の感覚がなくなっていきます。意外と注意が必要なのが、大学病院の教授や大病院の部長。定年間近だったりすると病院経営や組織運営、研究活動が仕事のメインとなっていて、直近10年は自分であまり手術をしていないということもあります。名誉ある立場なので信頼できそうですが、ペーパーゴールドドライバーと同じです。

男性不妊分野で言えば、精索静脈瘤では顕微鏡下低位結紮術を年間100例以上行っている医師を選ぶといいと思います。

数は外科医の技量を評価する上で大切な指標ではありますが、数だけにとらわれるのは危険です。メディアは数を強調しすぎています。メディアに掲載される症例数は自己申告でテキトーなこともあるので信頼性も低いです。いくら数をこなしていても、才能がなかったり、技術向上のための努力をしないために下手な医師もいます。何年車を運転しても事故ばかり起こす人がいますよね?

・まともな経歴

経歴と今の実力は必ずしも一致しないことがありますが、参考にはなると思います。手術は手先の器用さだけでは上手くできず、病気の理解・解剖の理解・手術前後の全身管理など知識面での能力も大切な要素です。手術手技の練習も、今までしっかりと勉強してきている先生の方が熱心にする傾向がある印象です。医学部受験の段階でトップの東大と一番下の私立大学では予備校の偏差値で20近く差があります。修練する病院も、化石のような科学的根拠のない治療を行っている病院から世界レベルの病院まで様々です。風邪ぐらいなら誰が診ても大差ないですが、「人生をかけた手術」では話が違います。

執刀医の技量は一緒に仕事をしたことのある専門家でなければ正確に知ることはできません。医師の私が今、胃癌で手術が必要になっても、どの医師が一番いいのかは分かりません。患者さんは、もっと分からないと思います。知らない人を評価する上で、経歴は大切な判断要素の一つになってくると思います。ここで固有名詞を挙げての名言は避けますが、私が手術を受けるなら、これ以上の経歴は最低限欲しいというラインがあります。

・病院のブランド名でなく、執刀医で選ぶ

世の中には有名なブランド病院が沢山あります。例えば、東大病院・国立がんセンター・癌研有明病院・聖路加病院・虎の門病院・企業病院など。しばしばメディアにも取り上げられ凄そうですが、すべての診療科が優れている訳ではありません

例えば、癌研有明病院は癌治療ではトップクラスですが、癌の専門病院なので心臓が専門の循環器内科はありません。生活習慣病などがある患者さんは、手術の後に心筋梗塞が起こるリスクが高いのですが、循環器内科医がいないので自院では対応できず、他院に搬送する必要があります。なので、心筋梗塞のリスクが高い患者さんは癌研有明病院では手術を受けるべきではありません。癌研有明病院は受けれを自主的に断っていますが。

他にも誰もが知っている東大病院は優れた医師が多いですが、腎臓移植は手術件数が年間3例ほどしかありません。前立腺癌など他の手術はいいのですが、腎臓移植に限っては術者の技量を維持できるほどの症例数ではありません。私が腎臓移植を受けるのであれば、症例数の多い女子医大など他の病院を検討します。

そのため病院のブランド名でなく執刀医、その人自身の技量に焦点を当てて選ぶ必要があります。

・大学などで研究をしたことがある

研究は必ずしも試験管を振る実験だけではありません。治療のデータをまとめて学会で発表したりする研究もあります。そういった学術的な活動は、絶えず新しい医学知識に触れるきっかけとなります。ある程度、研究を自分でした経験がないと世の中に無数にある論文を読んで日常診療に落とし込むこともできません。時代遅れな外科医にならないためにも、研究をした経験は大切です。もちろん、研究ばかりして手術がおろそかになっていては問題外ですが。

・質問に対して科学的な根拠をもって答えられる

質問に対してしっかりと説明ができることは、医師が科学的根拠に基づいて診療を行っている何よりの証拠です。意外とこれができる医師は多くありません。感覚的に「なんとなく、こういう治療が効くはず」と治療を進めている医師が沢山います。

 例えば、普通の風邪はウイルス感染症です。抗生物質は細菌だけに効くもので、ウイルスには効果がありません。これは医学の一般常識であるのにも関わらず、何となくレボフロキサシンという強めの(医学的に強めという表現は正確でないですが)抗生物質を処方する医師がまだまだいます。こういう医師に「なぜウイルス感染症を考えているのに、この処方をするのですか?」と聞いても「こっちの方が、なんとなく効くんだよ」程度の答えしかありません。

風邪だからいいですが、これを人生を決定づける手術でやられたら、たまったものではありません。しかし、手術の適応や手術の細部がテキトーな外科医もいます

・人間として信頼できる

最後ですが、一番大切なところです。残念ながらどんなに上手い外科医でも必ず失敗することがあります。神の手と言われても神ではありません。ここまで、5つの執刀医選びのポイントを紹介しましたが、どれも絶対的な条件ではありません。いくらネットなどで検索しても、患者さんが執刀医の腕前を本当に知ることは、ほぼ不可能です。そのため、最後は「この人になら人生を任せてもいい」という気持ちの面での納得感が大切です。目を見て話さない、上から目線など、人間として信頼できない外科医は、いくら肩書や手術の成績が良くても私は手術をしてほしくありません。

執刀医選びのポイント

・十分な症例数を経験している
・まともな経歴
・病院のブランド名でなく、執刀医で選ぶ
・大学などで研究をしたことがある

・質問に対して科学的な根拠をもって答えられる
人間として信頼できる